教育というと人間だけが行っていると思っている人が少なくないと思います。教育は人間独自のものではありません。むしろ動物の方が優れた教育を行っているかもしれません。
その理由は、動物は考えることなく生き延びなければならないからです。人間を含めてこの世に生れ出る時、生まれたいと自分で思って生まれた生命はありません。しかし、生まれたからには死を迎えるまで生き続けなければなりません。そのためには与えられた五感を駆使して、食べ物を得、安らかに休養したり眠ったりし、そして子孫を作らなければならないのです。そしてその能力がなくなると死を迎えます。これが自然の生き方です。
ですから、子を産んだ親はこの方法を子供に伝えなければならないわけです。この伝える方法を教育というのです。ですから、教育の本質は、「どういう風に生きるか」に尽きるわけなんです。動物はそれを生まれてすぐにします。というのは、例え自分の子であっても実は究極の敵だからです。動物が子供を鍛えている風に見える風景も、実はえさ場の取り合いなんです。
そして、動物は一度に複数の子を産み、その中から生き抜いて自分たちの子孫繁栄を受け継ぐ者だけにえさを与えて育てます。人間のように子供に愛情を持ち、全ての子に平等にチャンスを与えるなんていう思想はありません。自分がこの世に出たということは、自分のようにたくましく生き、自分のように良き子孫を産むことだけに生きるわけです。
私たちの言う人道主義的な生き方はないわけです。誤解のないように申し上げますが、そういうことが良いと言っているのではなく、人間の中にもこういった本質がどこかに残っている、いわゆる非人間的な要素があるってことを忘れてはいけないということです。
ですから、動物における教育は、どう生き延びるか、どう後継ぎを産むかに的を絞っています。それができそうもない子供には死を与えるのです。ひどいと思う人も少なくないと思いますが、それが自然界の掟なんです。ですから、人間的に生きるとか人道主義というのは自然界では異端ですし、破滅を招く生き方なんです。そこもしっかりと知っておくべきでしょう。