確かに、100人、200人の学生が同じ空間に存在している中で質問をすることは大変勇気が必要でしょう。「こんな質問をして仲間から馬鹿にされないだろうか」とか、「先生に軽蔑されないだろうか」とか、「早く授業が終わって他のことをしたいと考えている同級生に迷惑をかけないだろうか」とか、学生は学生なりにいろいろと考えてしまうのだと思います。
一方、教員は教員で、突然とんでもない質問が出たり、すぐに答えられないような質問が出たらどうしようと考え、質問時間を取らない場合もあるでしょうし、教えなければならないことがたくさんあり、質問なんか取っている暇はないと考えている教員もいるでしょう。
どっちにしましても、対面授業は“一過性”のものであり、継続性がほとんどありません。一定の時間、空間を共有し、知識をトランスファーしたという以外、その効果は限定的なんです。受講した学生も、その講義が終われば二度とその内容についてリピートしてもらう機会もなく、その気持ちも起きません。あとは期末のテストをどううまく乗り切るか、対処するかしかないわけです。
これで教育といえるでしょうか。「それなら教科書を読めばいいじゃないか、いや、教科書を作ればリピートの機会になるじゃないか」という論もありますが、難しいこと、新しいことは聞くに勝るものはありません。本来、教育は内容的に受講者にとって未知なことを教授することが前提です。もちろん誰もが知っていることについても、それが正しくないという見解を示すことも大事なことですが、まず受講生が知らない、知りたい、身につけたい知識や見識、そして経験談などを通して二次体験してもらうことです。その驚きや喜びによってもっと先のことを学ぼう、学びたいとなってはじめて教育効果が語れるのです。