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いま高等教育や成人教育分野での重要課題のひとつが、学習の動機付け、すなわちモチベーションの維持ではないでしょうか。
eラーニングをうまく活用することで生徒のモチベーションの維持に大きく貢献できる可能性があります。
教育学的には行動主義的から社会的構成主義的に進化させ、生徒中心の学習法を構築するという原理です。
生徒中心の学習法はこれまでは精神論的な面があったことは否めませんが、スマートメディア、ソーシャルメディアの特性を活かした最新のeラーニングシステムを活用することで学習形態の自由度が飛躍的に拡がります。
思い立ったら束の間の2分間でも、ネットにつながるところであれば世界のどこでも学習ができます。
ある大学でスマートメディアを活用した授業では学生の予習、復習の時間帯が曜日も時間も拡がり365日24時間、いつでも誰かが勉強しているという状況に変化したと報告されています。
スマートメディアを使って見ると確かに簡単に使える手軽さがあります。
この手軽さが束の間でも本を読む、友達と対話するという学習行動を誘います。
若者を中心にメディアは新聞、パソコンから、スマートメディアに急速にシフトしています。
またスマートメディアは急速にパソコンと同様な機能を備えて来ますので、この特徴は加速すると判断できます。
ここで取り上げるeラーニングとはスマートメディア、ソーシャルメディアによるeラーニングシステムをクラウド環境上に構築した学習環境といっても良いと思います。
最新のeラーニングの活用で得られる学習法のメリットは、以下のような学習のひとコマからも想定することができます。
教員がライブで講座を開くことも容易で、教員は出張中でも授業を発信できる。生徒は教員が話している途中でも質問を発することができ、教員は質問に答えながら授業を続ける。発信された講座はクラウドに蓄積され、教員が授業している時間に学習することの出来なかった生徒は後で見ることもできる。
食事をした後、コーヒーを飲みながら5分ほどテストをやってみた。わからないところはソーシャルメディアで仲間に聞いたらすぐ答えが返ってきた。この学習記録はスマートメディアで学習したこともパソコンで学習した記録もシームレスに記録されている。
わからないところを仲間に聞いたら回答とさらに面白いデータも教えてくれた。解らなかったところを苦労して解った仲間のはなしは解りやすいし、自分への励ましにもなった。学習仲間が集まってたまに行うリアルなコミュニケーションでネット上のコミュニケーションの密度が高まった。
歴史で学んだ史跡に行った仲間が学習用サイトに写真と説明をアップロードした。最近の状況が判って学習に親近感が沸いた。自分も役立つ情報があればアップロードしよう。
授業に使われる教材は学習ポータルサイトに事前にアップされているので、電車の中でサット読んでおいた。はなしの概要がわかっていたので先生のはなしが良く理解できた。たまにおきる疑問も先生に質問を送るとはなしのなかで答えてくれた
最新のeラーニングを活用した通信教育はあらゆる可能性を秘めていると云えます。
特にスマートメディア、ソーシャルメディア、高速データ通信やクラウドなどの普及により最近に実用化が可能になったeラーニングによる学習は素晴らしい教授法です。
教育の情報化で一歩先を行く韓国ではこのような教育は生徒にとってオーダーメイドの教育であり、創意的学習社会へと進化すると表現しています。
eラーニングの活用は大きな可能性と教育に改革をもたらす教授法ですが、実用化の成功のためには幾つかの条件があることを先行事例が教えています。
それらの条件とは、
eラーニングによる教授法は学校経営にも影響を与える大きな変革を伴うため学園長など組織のトップダウンが絶対必要である。
新しい教育システム、新しい教授法、新しい評価軸と新しい教育の世界を切り開く事の連続となるであろう。それだけにICT、スマートメディア、教育に強い人達の確保・存在は大きな成功要因となる。
文部科学省が23年4月に策定した「教育の情報化ビジョン」でも指摘しているように、ICT活用指導力向上のための講習・授業研究等の実施等、具体的な授業に即した演習等を中心に教員の教育が必要である。
最新のeラーニングシステムを活用するノウハウは研究者の纏めた理論を実用化するためのノウハウの研究や実践事例からのノウハウ吸収が不可欠である。
教授法としてはこれまでの教え込む教授法から生徒中心の学習法に進化していくので、生徒の満足度を核とする教授法の研究・改善のサイクルの実践が重要になる。
これは対面教育での事例ですが、アメリカでも専門学校が時代の変化に対応し、生き残るためにコロラド州の14の専門学校がリソースを出し合い、教授法の研究、システムの開発、教材の開発、供給などを共同で行うコンソシアムを組織し、成功をしたCCC On Line(http://www.ccconline.org/)の事例をベンチマークしました。もう7年程前のことです。
図表1 専門学校が共同で開発した教材で教育する教員たち
この事例は大きな変革を実現するために、専門学校がリソースを出し合って改革をすすめた事例ですが、専門学校が協力して大きな変革を実現するために数校が協力して共同の目的の達成のために取り組むというのもひとつの戦略です。
次回は、「最新テクノロジーの活用でeラーニングの教育効果は数倍に跳ね上がる」についてお話します
【筆者プロフィール】
特定非営利活動法人 日本イーラーニングコンソシアム 会長
NTTラーニングシステムズ株式会社 企画調査室長
小 松 秀 圀
電気工学科卒業後富士電機製造株式会社の教育担当を経て1965年より富士ゼロックス株式会社で企業内教育のプロフェッショナルとして20年の企業内教育実践経験を積んだ。1987年教育事業会社のNTTラーニングシステムズ株式会社の設立に参画、常務取締役としてメディア事業の開発で会社の基礎を構築した。現在熊本大学大学院 非常勤講師、教育システム情報学会 理事、特定非営利活動法人 日本イーラーニングコンソシアム 会長など、教育のシステム化ビジネスに永年携わると共にeラーニングや企業内教育関連の諸社会活動に参画し、二十数年アメリカの教育事情を調査するなど企業内教育を改善する社会的活動を行っている。