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eラーニングによる学習の特徴は通信制の学科とおなじで、地理的な学習制約条件を大幅に緩和できることにあります。
eラーニングによる学習機会の提供はこの地理的制約条件の緩和に加え、以下のように学習法を進化させかつ学習可能な学習範囲や地理的範囲を拡げる学習環境を創り込むことが可能です。 それらは
【1】学習範囲を“知識”の教育から“スキル”教育まで拡げることができる。
【2】生徒同士のコミュニティー組織をうまく活かすことによって、教授法を生徒中心の学習に進化させ、学習モチベーションを永く維持させることが可能になる。
【3】教科関連の多くの情報を共有できる情報環境を提供することで、知識基盤社会での“できる”教育の可能性を高めることができる。
最新のeラーニングによる学科とテキストによる通信制の学科と比較すると情報機能は以下のようになります。
提供できる機能 | eラーニング による通信教育 |
テキスト による通信教育 |
|
---|---|---|---|
提供できる情報 の種類 |
文字 | ◎ | ○ |
写真 | ◎ | ○ | |
音声 | ◎ | × | |
映像 | ◎ | × | |
学習サポート | 電子図書館 | ◎ | × |
学習管理 | ◎ | △ | |
学習活動支援 | コミュニケーション | ◎ | × |
コラボレ-ション | ◎ | × | |
どこでも | ◎ | ○ | |
いつでも | ◎ | ○ | |
双方向性 | ◎ | × |
表1 最新のeラーニングとテキストによる通信教育で提供できる情報機能の比較
eラーニングによる学科で可能になる学習制約条件の緩和を上記の表を念頭におはなし致します。
テキストでは提供できる情報は文字とか写真だけですから知識は提供できても、スキル教育は困難でした。最新のeラーニングですと動画映像が簡単に提供できますし、動画でリアルな映像を丁寧に細かいステップに分けて説明することもできますので、スキル教育の範囲が拡がります。サンフランシスコにあるAcademy Art of Universityという美術系の教科をフルオンラインで提供している過去に専門学校であった歴史を持つ大学では、彫刻や絵画の様なスキルを教育する教科でも学習ステップを細かく細分化した映像コンテンツを開発し、丁寧に教えるという工夫でスキル教育も可能であると説明しておりました。
またメディアの解像度が上がることにより絵画などの指導もオンラインで可能になったとのことでした。
生徒同士がネット上でコミュニティー組織を創り、生徒目線で日常会話などのコミュニケーションを取る、彼等なりの相談や教え合いなどのコラボレ-ションを通じて学習動機を維持し続けるはたらきは非常に大きいとして、成人教育の世界でもコミュニティーズ・オブ・プラクティス(Communities of Practice :Cop)として注目されています。
成人や高等教育では学習のモチベーションを高めることが、最も重要なテーマになっている昨今、学習のモチベーション維持に効果的なCopの活用は重要なノウハウとなります。
Copは確かにeラーニングの分野でも新しい教授法の分野ですが成人が生徒となっている学校では海外で多くの成功事例があり、日本でも早稲田大学のeスクールなどはCopを活かした教授法の成功事例のひとつと云えます。
成人の生徒が多い専門学校の教科には特に有効であると考えられます。
知識基盤社会になり何を学ぶにしても非常に多くの情報を消費しながら学習を進める必要があるようになりました。単に基礎知識を学ぶだけならばテキストに書かれたことを学ぶことで済みますが、学ぶ目標を“できる”レベルまで引き上げると関連する多くの情報が必要になります。そのためには電子的に関連情報をデジタル化して何時でも必要な情報が引き出せる電子図書館といえるアーカイブが学習支援機能として重要な役割を果たします。このアーカイブはキャンパスで学習する生徒にも活用できる新しい学習支援機能といえます。
このようにスキル修得を目的とする教科が多い専門学校の特性に合ったスマートメディア、ソーシャルメディア、クラウド環境を活かした新しいeラーニングによる学習環境は学びに必要な学習支援機能を飛躍的に高め、専門学校の地理的制約を大幅に軽減する可能性があります。
グローバルの時代の今日ではその制約の緩和は広く海外に居る生徒も学習するということも夢では無くなりつつあります。
次回は、「eラーニングをうまく活用するための条件とその環境づくりのノウハウ」についてお話します
【筆者プロフィール】
特定非営利活動法人 日本イーラーニングコンソシアム 会長
NTTラーニングシステムズ株式会社 企画調査室長
小 松 秀 圀
電気工学科卒業後富士電機製造株式会社の教育担当を経て1965年より富士ゼロックス株式会社で企業内教育のプロフェッショナルとして20年の企業内教育実践経験を積んだ。1987年教育事業会社のNTTラーニングシステムズ株式会社の設立に参画、常務取締役としてメディア事業の開発で会社の基礎を構築した。現在熊本大学大学院 非常勤講師、教育システム情報学会 理事、特定非営利活動法人 日本イーラーニングコンソシアム 会長など、教育のシステム化ビジネスに永年携わると共にeラーニングや企業内教育関連の諸社会活動に参画し、二十数年アメリカの教育事情を調査するなど企業内教育を改善する社会的活動を行っている。