eラーニングとは何か、どう進化するのか
今は100%の方が“eラーニングを知っている”と考えていると思います。しかし進化を続けるeラーニングの可能性のすべてを活かしたeラーニングの良さを多くの方々がまだ知らないというのが日本の実態のようです。
eラーニングの学習のイメージは“ひとりでデジタル化された教科書で学習をする”いうイメージが一般的です。これをeラーニングによる学習だと考えておられる方はeラーニングに対する認識を進化させて頂かなければなりません。
教育するということは学んだ事柄に関して判断力が養われる、もしくは学習した事柄が出来るようになることだと考えるのが最近の傾向です。そのためには教育情報の内容(構造化情報:コンテンツ)を学習したら、その内容を理解し、判断力や出来る能力へ昇華させなければなりません。コンテンツは学習仲間の知恵や情報の交換(非構造化情報:コンテクスト)もしくは先生の適切なアドバイスを受けるという学習過程を経て、徐々に生徒の能力に昇華されていきます。またその学習行動を継続させるためには個人でこつこつ努力するよりも、生徒同士で刺激しあいながらも、自分の能力や事情に合ったペースで学習するのが良いのかも知れません。自分のペースで学べるというのは生徒中心の学習法であるということもできます。
特に成人になれば生徒中心のいわゆる“Leaner Centric”という教授法が好まれるのが一般的です。
今のeラーニングはコンテンツの学習をすることは当然として、ライブの授業を遠隔で学習したり、後で記録された映像を見たりすることができます。コンテンツは一般的に文字やイラスト、写真で構成され、その知識は左脳に作用しますが、映像情報は右脳に作用し、感動や情感を伝え学習意欲を高めるのに効果的であると云われます。またコンテンツで学んだ知識を能力に昇華させるには仲間とはなしたり、意見を交換したりして、生徒同士の話し合いを通じて判断力や実践能力に昇華していきます。さらに生徒同士の協働作業等によってひとりで学習するより大きな学習テーマに取り組むことや、興味の有る仲間が集まってコミュニティーを創って学ぶ協働学習も、より深い理解を得ることのできる学習行動として有効です。また自分独自の興味によりある特定の事柄を参考文献、研究論文またはインターネットで学ぶことがあるかも知れません。これは学習をするのに有効な情報を生徒同士で共有する情報共有機能です。
そして学習活動をeラーニングシステム上でサポートする学習支援活動などで、生徒の背中をそっと押す場合があるかもしれません。最新のeラーニングは知識の提供に加え、生徒同士の話し合い、協働学習、情報共有そして学習の支援ができる機能を有しています。
特に学習目標の明確な成人学生などには学習の制約条件を大幅に緩和するeラーニングはまさに新しい学びのスタイルと云えるでしょう。インストラクショナル・デザイン、成人教育学の進化と共に、最近のスマートフォン、ソーシャルメディア、Webテクノロジー、検索エンジン、クラウドコンピューティングなどの発展はこのような革新的な学習環境の構築への敷居を低くして、その実現可能性を高めています。
ICTを活用した教育で学びのスタイルが大きく進化していくと考えられています。
*次回は、「eラーニングが今の社会にマッチする理由」について述べていきます。
【筆者プロフィール】
特定非営利活動法人 日本イーラーニングコンソシアム 会長
NTTラーニングシステムズ株式会社 企画調査室長
小 松 秀 圀
電気工学科卒業後富士電機製造株式会社の教育担当を経て1965年より富士ゼロックス株式会社で企業内教育のプロフェッショナルとして20年の企業内教育実践経験を積んだ。1987年教育事業会社のNTTラーニングシステムズ株式会社の設立に参画、常務取締役としてメディア事業の開発で会社の基礎を構築した。現在熊本大学大学院 非常勤講師、教育システム情報学会 理事、特定非営利活動法人 日本イーラーニングコンソシアム 会長など、教育のシステム化ビジネスに永年携わると共にeラーニングや企業内教育関連の諸社会活動に参画し、二十数年アメリカの教育事情を調査するなど企業内教育を改善する社会的活動を行っている。