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教える側の思惑で作ったコンテンツの結末は・・・
eラーニングコンテンツに関しては、何故かエンタテイメントの論理が通じません。
マンガやゲームは、ビジュアルや操作性に拘りをみせることでユーザーを惹きつけることができますが、eラーニングコンテンツは どうも その逆のようです。
せっかくリッチなコンテンツを作っても、様々な学習環境に対応できず、運用ベースにうまく載らないことがあります。
つまり、いくら格好良いデザインやアニメーションが施された立派なコンテンツを作っても、業務の中にうまく溶け込まなければ不要の産物になるということです。
わたしの経験から、良くあるパターンを3つお話しさせて頂きます。
ケータイやモバイルを使ってシンプルにテストをするeラーニングを行っていた。
⇒新企画として社員全員にiPadを配布し、映像やアニメーションを多様したリッチなコンテンツに切り替え学習させた。
⇒結果、eラーニングの受講率が低下し、せっかく根付いた「学ぶ習慣や体質」も壊れてしまった。
ケース1ですが、教える側と教わる側の思惑が全く一致していません。
教える側の担当者は、「今までの質素なコンテンツを大きな画面で格好良く見せたい」と思いリニューアルしたのかもしれませんが、受講者にとっては迷惑な話です。特に営業チームは月の売り上げ目標もあり、とにかく忙しいので、ケータイやモバイルで隙間時間にさっさと終われるコンテンツの方が便利だったはずです。
もちろん、リッチコンテンツ=失敗とは言いませんが、いつどこで、誰が何のために学習し、それが実際に何の役立つのかの方向性を定めないとお金も時間も大きく無駄にする可能性があります。
簡素なコンテンツをリッチにするだけなら、子供でも考えつきますからね。
パソコンで講座を閲覧してからテストをやるというシンプルなeラーニング研修を行っていた。
⇒このeラーニングがシンプル過ぎて、「受講者が講座を途中で止めてしまい、さっさとテストに進んでしまったらどうしよう?」と不安に思い、最後まで閲覧しなければテストを受けられない仕組みにしてしまった。
⇒結果、研修を途中で止めてしまう受講者が増えた。
次にケース2ですが、途中で止められて困るなら内容を工夫してください。
そのコンテンツが実際に役立つもので、適切な学習時間であるならば、皆、納得して最後までやってくれるはずです。
なんだか「俺の歌を聴け!」と嫌がる人を椅子に縛り付け、
「学習効果」というお題目を振りかざし、
システムの改訂で、さらっと「ジャイアンのコンサート」が実現されてしまう
のが、eラーニングの恐ろしいところですが。
正直これは逆効果です。皆に反感を持たれます。反感持たれる=やらなくなります。
受講者のことを親身に考え、内容や学習時間に工夫を凝らしてください。
システムで受講者を強制しようとしても無駄ですよ!
アプリケーションソフトの操作方法を動画で見て学習していた。
⇒担当者が動画を見ているだけだと寝てしまうと思い、シミュレーターを開発し、その画面に文字や記号を入力させるようにした。
⇒結果、そのシミュレーターを解説する動画も必要になってしまい、無駄に学習時間が長くなり、費用も大きくなってしまった。
最後にケース3ですが、シミュレーターに関して、知らない人も多いので話しておきます。
ソフトの操作方法を習得するため、実際のアプリと同じ画面のものを製作し、そこに擬似的に文字や数字を入力させ、判定を行う自学習ツールをシミュレーターと言います。
これは悪くないです。ぜひやってください。ただし、お金がいっぱいかかります。
端的に考えれば、映像で操作方法を習得しそれを元に、実際のソフトを操作すれば良いだけだとは思いますが、お金があり過ぎると、どうも このような発想のものを作ろうとする人がいます。
正直、ややっこしいし、金がかかるし、あまり効果が無いので止めた方がいいと思いますが、大きな予算を組めるなら、どうぞやってください。
要はeラーニングのコンテンツの制作は、業務のどの部分を改善するのか?または効率化するのか?
それによる成果は何なのか?ハッキリと定め、業務の中のどの部分で活用するかまでしっかり考えてから作らなければ、全く意味の無いものになります。
PCでやるよりiPadでやる方がイメージがいいとか、ケータイやiPhoneでやるよりタブレットの方が大きくて見やすいなどと、関係ない方向に話が進すみかねません。
この際、ハッキリ言います。機器やデザインクオリティーなど関係ありません。
自社の業務を良く見直して、その業務の流れの中に最もマッチする端末は何か?
コンテンツはどのようなものなら高い効果が得られるのか?など良く考えてからやるべきでしょう。
話は変わりますが、以前こんな担当者がいらっしゃいました。
「安くて、さっさと出来るeラーニングなら何でもいい!直ちに○○○教材を全社員にやらせろ!」
と開口一番おっしゃられてました。もう喧嘩腰です。
おそらく、これをやらされる受講者の心の中は、
「ふざけんな!
こんなわけわからんもの 忙しいのにやらせやがって!
死んでもやってやるか!」
になると思います。
教える側と教わる側が全く噛み合ってませんね。(笑)
【筆者プロフィール】
株式会社WARK 代表取締役 長瀬 昭彦
eラーニングコンテンツ内製化支援のスペシャリストとして数多くのプロジェクトや研究グループに参画。自らもコンテンツの内製化セミナーの講師として全国に津々浦々の企業・学校等で指導を行っている。また、日本で唯一のeラーニングの業界団体である日本e-Learningコンソシアムの理事を務め、2012年に新しく設立されたモバイルラーニングコンソシアムの副代表理事も務める。さらに過去4年間、日本e-Learningコンソシアムの「コンテンツ内製化研究グループ」のリーダーとして多くの企業・学校の内製化支援・指導を行っている。
株式会社WARK(ワーク)事業概要:
eラーニング/モバイルラーニングのコンテンツ作成ツールの開発・販売。
コンテンツ内製化支援セミナーの開催。システム・コンテンツの受託開発。
eラーニングASPの開発・販売および運用支援。それらに関するコンサルティング業務。
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