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最後に、eラーニングを運営するにあたり、注意すべきポイントをご紹介します。
受講者がシステムにログインしたのは良いが、次に何をすればわからない…というようなことになっていると、運営フェーズで必ず受講者から大量に質問が来てしまいます。マニュアルを事前に配布する、やそもそもシステムや教材が受講者を迷わせない設計になっていることが大事です。
受講者と運営者、お互いの顔が見えにくいeラーニングにとって、受講者からの質問は大きな接点になります。受講者にとっては、わからないことがあるから質問をしてくるわけですので、極力早く回答すべきです。お問い合わせページに「○日以内で回答いたします」のような表記も必要です。
また、質問の種類によって誰が回答するのかをあらかじめ明確にしておく必要があります。受講者からの質問は、教材内容に関するものは当然ですが、意外と多いのが操作方法や「教材が見られない」といったシステム的な質問です。内容については講師の方しか答えられないと思いますが、システム的な質問は、運営スタッフかシステムを提供しているベンダーが答えることになると思いますので、その取り決めを事前にしておく必要があります。よくある質問については、FAQのページなどを設けて掲載すれば問い合わせ対応の労力を削減できますので、おすすめです。いずれにしても受講者からの質問をたらい回しにしないことが大切です。
ディスカッションするための掲示板やコミュニティを用意する場合、受講者主導ではなかなか盛り上がりません。受講者が書き込みやすい環境を整えてあげることが大事です。例えば、「○○について皆さんで話しあってください。」で終わるのではなく、講師の方が「例えば~ということです。」というように例示してあげるとか、「○○について話し合うにあたって、まずは□□ということについて考えてみてください。」というように、意見が出やすいように話の筋道を作ってあげるなどです。
また、受講者の方が書き込みをした場合、それに対して他の受講者の方がすぐにレスポンスを返すような感じになれば、勝手に議論が盛り上がるようになりますが、なかなかレスが付かない場合、講師の方が反応してあげるのが良いでしょう。講師の方が見てくれている、反応してくれるというのがわかると、次第に盛り上がるようになります。レスが付かないまま放っておくと、「書き込んでも何の反応もない…」とモチベーションが下がってしまいます。
受講者はただでさえeラーニングという孤独になりがちな形態で学習しています。受講者の方から連絡してくれれば良いかもしれませんが、多くの受講者は自分からアクションを起こすことは少ない(サービスや講座の内容、受講者属性などによって数値は異なりますが、だいたい受講者数の1割くらい)です。例えば、期限が設定されている講座であれば、期限2週間や1週間前に連絡するとか、講座受講が滞っている受講者に対して「何かわからないことはありますか?」とメールして受講を促すなど、受講者とコミュニケーションを取り、支援することが大事です。
このように学習者を支援することを「メンタリング」と呼んでいますが、メンタリングをするかしないかで受講状況は大きく変わってきます。それをすべて人力で行うのは受講者数が増えれば増えるほど大変ですが、LMSによっては、設定により自動でメンタリングのメールを出せる機能が付いているものもありますので、そのようなLMSを検討されるのも良いでしょう。
受講者からの質問や受講修了後のアンケート結果には、多くの改善要望が書かれています。実際に使っている方からの意見は、運営側では気づかないことも多く大変貴重です。実際に改善を行うことで、受講者からのロイヤリティが高まります。
また、受講ログやテスト結果を分析することで改善ポイントを発見できることもあります。例えば、閲覧回数を調べた結果、同じ講座なのに他の学習項より平均閲覧回数が高い学習項があった場合、内容が難しくてわかりにくいのではないかと推測できます。また、難易度を低く設定したはずなのに正解率が低い問題があった場合、問題の出し方が悪いのではと推測できます。他にも、閲覧時間帯や1回あたりの学習にどれだけ時間をかけているかなどを調べたり、アンケートで満足度に関する質問を設け、その結果と成績を集計してみたりなどすると、いろいろなことがわかるようになります。このように、集合研修や通信教育と違って、eラーニングは受講者の足あとがすべて残ることが大きなメリットです。
9回にわたってeラーニング導入について書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。これがみなさまのeラーニング導入のヒントになれば幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
【筆者プロフィール】
西川修平 ◆ eラーニングサービス全般を提供する株式会社プロシーズ所属。当初は個人向けeラーニングサービスのみを提供していたプロシーズの会社設立に参画。以来、個人向けだけでなく、さまざまな業種の企業、学校・官公庁のeラーニング教材開発・システム導入に携わる。