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今回は、教材コンテンツを開発するにあたり、注意すべきポイントをお伝えいたします。
教材コンテンツを開発する際、まず開発する教材内容と対象受講者像を決定します。教材内容の決定時には、何をもって修了とするのか、つまり教材のゴールを設定します。ゴールが知識習得なのか、何らかの行動変容なのか、業績が上がることなのかなどによって、評価方法が変わります。これについては、「カークパトリックの4段階評価」という考え方があり、研修評価・効果測定を下記4つのレベルに分けています。
レベル1(Reaction):
研修直後にアンケートなどで研修の満足度を評価するもの
レベル2(Learning):
テストなどで研修内容の理解度を評価するもの
レベル3(Behavior):
研修によって受講者の姿勢や行動の変化を測定して評価するもの
レベル4(Results):
売上や利益、顧客満足など研修によって組織にどのような成果をもたらしたかを評価するもの
このように、レベルが上がるほど評価が難しくなります。実際にはレベル1か2で評価することが多いようです。
受講者属性の決定時には、受講者の年齢や性別なども考慮します(これらによって文字やボタン等の大きさやデザインなどが変わります)が、最も考慮すべきなのは、対象受講者の前提知識です。教材内容についてある程度知識がある人と全く無い人ではカリキュラムがまるで変わってきます。対象受講者の前提知識にバラつきがある場合は、例えば事前チェックを受講前に受けてもらい、その結果によって受講すべき学習項目を振り分ける、というようなことを行い、学習効率を上げたりすることもあります。
対象受講者と教材内容が決まれば、次は教材のカリキュラムを設計します。カリキュラムは一般的には、章・節・項という単位で構成します。ゴールを達成するための目標をまずは「章」という単位にブレイクダウンさせ、さらに章目標を「節」単位、節目標を「項」単位にブレイクダウンさせます。
この場合、学習進捗に反映される最小単位は「節」ということになりますが、その所要時間は5~10分くらいにとどめたほうが良いでしょう。細かく学習進捗が取れることと、これ以上長くなると受講者の集中力が続かないためです。細かく区切るほうが達成感も感じやすくなります。
ここで言う「教材コンテンツの仕様」とは画面のデザイン・レイアウト、コンテンツとしての表現のことです。ここも教材内容によって仕様が大きく変わってきます。
通常集合研修などで行っている講義をeラーニング化する際、仕様の話になるとよく出てくるのが、「講師を出すか出さないか」です。
撮影した講師の方を出す一番のメリットは、臨場感が出せることです。特に講義が上手い方は、その上手さをそのまま伝えることができます。また、考え方や心がまえなど、暗記を必要とせず、受講者の印象に残したい内容でも有効です。
逆に、覚えることが必要な内容の場合は、図解等を表示させるのが有効です。特に抽象的な内容などの場合は、ナレーションに合わせて図を変化させたり、移動させたりしながら解説すれば記憶させやすくなります。これは、企画書などを書くときになるべく図で示したほうが頭に残るというのと同様です。
デザインやレイアウトは、受講者の属性に合わせて考える必要があります。先に示したように文字の大きさに配慮したり、直感的にわかるボタンの配置・デザインを考えたりすることはもちろん、PCディスプレイの解像度や受講場所(例えば、職場でも受講することが考えられる場合、音が出せないため、ナレーションで読まれる原稿を画面にも表示する必要があります)などにも配慮して設計しなければなりません。
今までの設計が終われば、あとは素材を揃えてオーサリングして完成です。「オーサリング」とは、画像や音声などの素材を組み合わせて1つのコンテンツを作り上げることを言います。例えばパワーポイントの資料と映像ファイル素材を使って誰でも簡単にeラーニングコンテンツを作ることができるオーサリングツールなども販売されていますので、安価にコンテンツを作ることも可能です。簡単・安価である反面、できることが限られてしまうということと、オリジナリティが出せないことがデメリットです。このコラムを読んでいらっしゃる方のほとんどが、eラーニングを社内研修での利用などではなく、一つのサービスとして販売されることをお考えと思いますので、オリジナリティを出すために一から開発されることをお勧めします。もちろん一から開発となると、スキルが必要となるため、専門業者に外注、もしくはスキルを持った人員を確保せねばならず、その分コストもかさみますが、教材は、eラーニングで一番目立つところですので、多少コストがかかっても独自の教材コンテンツを開発されるのが良いと思います。
次回は最後ですが、eラーニングを運営するにあたっての注意点をご紹介します。
【筆者プロフィール】
西川修平 ◆ eラーニングサービス全般を提供する株式会社プロシーズ所属。当初は個人向けeラーニングサービスのみを提供していたプロシーズの会社設立に参画。以来、個人向けだけでなく、さまざまな業種の企業、学校・官公庁のeラーニング教材開発・システム導入に携わる。