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今回から、eラーニング導入が決まった後、実際にどのようなシステムを導入し、どのように教材コンテンツを作成していけば良いかを書いていきたいと思います。まずはLMS(Learning Management System:学習管理システム)です。
LMSを選定する際、LMSを提供しているいくつかの事業者に声をかけて説明をしてもらうと思いますが、まずは自分たちがどのようなeラーニング事業を行っていきたいかを考える必要があります。はっきりとしたものがない場合は、LMS提供事業者からeラーニングで何ができるかをヒアリングし、その上で構想を練り、自分たちにとってLMSにほしい機能は何かを明確にします。この状態でコンペなどを開き、事業者から最適な提案をしてもらい、最終的には、
・運用方法はわかりやすいか、運用しやすいか
・柔軟に対応してくれる事業者であるか
・コストはどれくらいかかるか
というポイントで検討し、決定すれば良いと思います。この回からどのようなLMSが世の中にはあるのか、どんな機能があるのか、どのようなコストがかかるかなどを順番に紹介します。
まず、LMSがどのようなものなのかをあまりご存じない方のために、LMSの一般的な機能である学習管理の機能をご説明します。大きく「学習者の管理」「教材コンテンツの管理」「学習者の進捗管理」という風に分けられます。
「学習者の管理」とは、学習者の登録/削除をしたり、グループなどに分ける機能です。グループの分け方はさまざまですが、学校などの場合、クラスごとに分けたり、受講している講座ごとに分けたりして、管理しやすくします。
「教材コンテンツの管理」は、教材コンテンツの登録・削除を行います。受講順序の設定や、公開時期の制御も行うことができます。LMSによっては、「この学習項目を完了しなければ、次へ進めない」という制御を行うこともできます。
「学習者の進捗管理」は、学習者の受講状況やテストの成績などを管理することができます。学習進捗が遅れている学習者に対してメールなどで受講を促したり、テスト結果を元にテスト問題や教材内容を見直したりすることができます。
以上がどのLMSにも必ず備わっている機能です。逆に備わっていないものがあれば、それはまず選択肢から外すべきでしょう。
次にLMSの種類ですが、LMSには有料のものと無料のものがあります。
有料のLMSを提供している事業者で区分すると、大きくは、大手ITベンダー・研修会社・人材ソリューション事業者とeラーニング専業事業者という区分になります。
大手ITベンダー・研修会社・人材ソリューション事業者のLMSの場合、大企業用に設計されていたり、研修の1ツールとして設計されていたりするため、数万人規模の大規模運用にも耐えうるもの、多機能なものが多くなっています。グローバル企業用に多言語対応しているものも多いです。ただ、多機能ゆえに使い勝手があまり良くない、カスタマイズができないという話をよく聞きます。また、価格も高額です。
eラーニング専業事業者のLMSは、上記LMSほど多機能ではありませんが、素早くバージョンアップに対応し、機能を増やしてきているものが多いです。ベンチャー企業が多いため、カスタマイズなどにも柔軟に素早く対応してくれるのが特徴です。ただ、大手のLMSほど大規模運用には向かないです。価格は大手ほど高くはありません。
最後に無料のLMSです。無料のLMSには、「Moodle(ムードル)」や「Sakai(サカイ)」などがあります。特に「Moodle」はインストールやアップグレードも容易に行え、機能も豊富なため、多く利用されています。ただ、無料なのでシステムの構築や保守は自分たちで行う必要があります。内部にそのようなことが得意な人がいれば事足りますが、いなければMoodle構築支援をサービスとして行っている事業者などに依頼する必要があります。その場合は費用がかかってきますので、無料というメリットは薄れます。
かなりおおまかですが、以上のような種類のLMSが存在します。
次回はLMSの機能についてご紹介します。
【筆者プロフィール】
西川修平 ◆ eラーニングサービス全般を提供する株式会社プロシーズ所属。当初は個人向けeラーニングサービスのみを提供していたプロシーズの会社設立に参画。以来、個人向けだけでなく、さまざまな業種の企業、学校・官公庁のeラーニング教材開発・システム導入に携わる。