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当然のことかもしれませんが、これがあるのと無いのとでは、学生の反応や満足度が大きく異なってきます。
第1回のコラムでも示しましたように、こちらの大学では学生に満足度調査を行っていらっしゃいます。「eラーニング授業は、総合的に満足しましたか?」という質問では、
満足:45.9%
まあ満足:40.1%
どちらともいえない:9.2%
やや不満:3.2%
不満:1.5%
→「満足」「まあ満足」で86%
という結果が出ているのは既に示したとおりです。これを講座ごとに見てみると、満足度にバラつきが出ています。そこで、「満足」「まあ満足」の割合が高い講座と低い講座で何が違うのかを調べてみました。「満足」「まあ満足」合わせて90%以上の講座と70%以下の講座のアンケートに書かれていることを比べてみると、1つのキーワードが浮かび上がってきました。
それは、「親切」であるかどうかということです。
例えば、70%以下の講座では下記のような意見が多く見られました。
「教材中での説明が不親切、文字ばかりで簡素すぎる。」
「課題を提出しても全くそれについての返答がない。もっと親切味を持ってほしい。」
「質問に応えてくれず、残念。」
「ディスカッションがあまり盛り上がらなかった。仕切ってくれる人がいなかった。」
逆に、90%以上の講座では下記のような意見が多く見られました。
「分かりやすく授業をしていただいたのでとても満足」
「授業の完成度が高い。ネットであるということを考慮した丁寧な授業でした。」
「メールで重ねてのフォローがあったので大変親切でわかりやすいと思いました。」
「先生の質疑応答が丁寧でとてもよかった。」
教材についても、ネット上でのディスカッション・質疑応答についても中心となるのは教員になります。教員がいかに親切に学生に接し、丁寧に教材を作っていくかが成功するかしないかの鍵になるということがこのアンケートからもわかると思います。
教員にとってみれば、今までの通常の業務に加えてeラーニング教材作成や運営という業務が追加されることになりますので、その分の負担を強いることになります。
では、そのような状況の下、教員から最大限の協力を得るにはどうすれば良いか、まずはeラーニング授業というものがどのようなものであるかを具体的にイメージしていただくように仕向けることが大事です。
特に、はじめてeラーニングを導入される場合などは、教員も何となくはわかるが、具体的なイメージがなく、何をどのように進めれば良いかわからず、かつ本業が忙しいので結果的にうまく進まないということになりかねないです。
例えば、教材のシナリオを依頼する際、ただ「eラーニング用のシナリオを書いてください。」ではなく、eラーニング教材のサンプルを見ていただくなどしながら、講義や通信教材とeラーニング教材が受講者の受講環境も教材としての表現方法も全く違う・効果的な教材にするにはどうすれば良いかということを説明し、具体的にイメージを持ってもらった上で依頼すれば良いと思います。
私がこちらの大学様で教材づくりに取り組み始めた時も、当初はただただシナリオを書いてくださいで済ませてしまっており、なかなか原稿が上がってこず、制作スケジュールが大幅にずれこみ、締切り前にバタバタ…というようなことがよくありました。より具体的なイメージを持っていただくため、シナリオを書くためのフォーマットを作るなどの取り組みも行いました。今では、教員の方から「動画にするのなら、ここにわかりやすい図を入れましょうか」といった提案をいただいたりするような環境が整っています。
ディスカッションや質問への回答も、ただ「頻繁に学生の発言をチェックして、議論が活発になるようにうまく進めてください。」だけではなかなか動いてくれません。学生の発言があれば、自動的に教員にメールが届くような仕組みを作ったり、運営スタッフが掲示板を定期的に確認し、あまり発言がないようであれば教員に発言を促すような書込を依頼するなど、教員が動きやすい環境を作ってあげることも大切です。素早いレスポンスがあるだけでも受講者の満足度は高まると思います。
eラーニングの導入となると、どのようなシステムを選ぶべきか、どのような教材を作るべきかという視点を重視しがちです(実際重要ですが)が、結局は人間が運用するわけで、その中心となる教員に最大限協力してもらえるような体制を作ることが最も大事だと考えます。
次回からはシステムや教材コンテンツなどで注意すべきポイントを書いていきます。
【筆者プロフィール】
西川修平 ◆ eラーニングサービス全般を提供する株式会社プロシーズ所属。当初は個人向けeラーニングサービスのみを提供していたプロシーズの会社設立に参画。以来、個人向けだけでなく、さまざまな業種の企業、学校・官公庁のeラーニング教材開発・システム導入に携わる。