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今までeラーニングが支持されている理由などメリットを中心に書いてきましたが、今回はデメリットを挙げてみたいと思います。eラーニングが通信授業や対面授業では補えないところをフォローしているとはいえ、すべてeラーニングで事足りるかというとそうではありません。eラーニングのデメリットを理解しながら導入することが大切です。
eラーニング教材は、市販のパッケージものが世の中には数多くありますが、専門学校の授業としての教材と考えると、オリジナリティを出す必要があると思います。そういう意味で言うと、やはり一から教材コンテンツを作る必要がありますが、ここはやはり大変です。
まず担当の教員にコンテンツの元となるシナリオを書いていただくことになりますが、教員も自身の講義や教科書を作るなどの業務があるため、負担を強いることになります。教科書を元にして業者にシナリオから作ってもらうことも可能ですが、その分のコストは増えることになります。
さらに、完成したシナリオを電子化する必要もありますが、専門的な知識が必要なので、学校内で作成しようと思えば、作成スタッフを用意し、作成知識・スキルを習得させる必要があります。電子化する知識だけではなく、やはり対面授業とeラーニングは性質が異なるため、eラーニングとして適切な教材とは何かという知識も必要です。そういうことを考慮すると、業者に作ってもらう方が良いですが、やはりそこにはコストがかかります。
ただ、教材コンテンツはeラーニング授業の要であるので、労力やコストはかかりますが、それを惜しまず、品質の高いコンテンツを作ることを目指すべきです。しかも一度作ってしまえば、メンテナンスこそ必要ですが、何年も利用できますし、その分の講師にかかるコストが削減できることを考えますと、対面授業にかかるコストよりも抑えることも可能です。
「いつでも受講できる」メリットの裏返しで、いつでも受講できるからいつまで経っても受講しないということが、eラーニングのデメリットが語られる際、必ずと言っていいほど挙げられるポイントです。学生が社会人中心で、働きながらわざわざ受講料を支払って受講するような学習意欲の高い学生が多い場合は、あまり問題にはなりませんが、そうではない場合は、受講を促すような施策をする必要があります。
受講者をフォローするメンターを置き、例えば「期日が○日前に迫っています。期日前に慌てないように今のうちから受講を進めてください。」というお知らせをすることや、受講が一週間滞っている受講者に気遣いのメールをするなどといったメンタリングが一般的ではありますが、実際受講者には喜ばれているようです。ただ、まず第一に、受講者が能動的に学習したくなるような教材コンテンツを提供したり、掲示板などで発言したくなるような運用を行っていくことが重要です。
パソコンの前で学習する訳ですから、知識を習得する学習には向きますが、実習が必要な学習には不向きだと言われています。確かにいくら画面で実習方法を学習し、受講者がその場でやってみても、評価してくれる人はその場にはいないので、その意味で不向きと言えます。
私が立ち上げから参画しているプロジェクトに実技を伴うeラーニングとして楽器演奏を学ぶ「Boston School of Music」(http://www.e-musicschool.com/)というサービスがあります。そこでは、受講者が学習した結果として自分の演奏を録音した音源をアップし、講師や他の受講者に評価してもらうという機能があり、そのデメリットを補う試みを実施しています。また、3カ月に一度はワークショップと称して講師と受講者が集まり、直接指導できる機会も設けています。遠隔地の受講者はなかなか参加できませんが、このように対面でしか得られない体験と組み合わせることでデメリットを補おうとしています。
eラーニングでも講師に質問はできますが、メールや掲示板になるため、聞きたい時にすぐに答えてくれるということはありません。他の受講者の意見を掲示板で見て知ることもできますが、それ以上のコミュニケーションはeラーニングでは難しいです。同期型学習のライブ授業のシステムを活用することでそのデメリットは軽減できると思いますが、対面授業などとうまく併用して運用することが良いかもしれません。
冒頭にも書きましたが、このようなデメリットがあることを念頭において運用することで、eラーニングをより有効な学習形態にすることができると思います。次回からは、eラーニングの運用に当たって注意すべき点などを挙げていきたいと思います。
【筆者プロフィール】
西川修平 ◆ eラーニングサービス全般を提供する株式会社プロシーズ所属。当初は個人向けeラーニングサービスのみを提供していたプロシーズの会社設立に参画。以来、個人向けだけでなく、さまざまな業種の企業、学校・官公庁のeラーニング教材開発・システム導入に携わる。