事例から学ぶ
失敗しないeラーニング導入(3)
教員にとってのeラーニングのメリット
前回は受講者側のeラーニングのメリットをお伝えしましたが、今回は教員、運営側のメリットをお伝えします。
(1) 選択式のテストが自動採点される
eラーニングの学習管理システム(LMS)で問題文・選択肢・回答・配点などを設定すればテスト問題を作ることができます。それを使ってテストを配信すれば、学習者が解答すると同時に採点が行われ、採点する手間が省けます(残念ながら記述式問題やレポートの採点までは自動採点できませんが…)。また、学習者の回答データが残るので、後から問題の難易度が適切だったかどうかという分析を行いやすいというのもメリットです。
(2) テキストが図式化・アニメーション化される
前述の大学で教員から一番喜ばれたのが、テキストが図式化・アニメーション化されるということです。
この大学のeラーニング教材は、教員が書いたシナリオを元に教材コンテンツ開発業者が絵コンテを作り、それを元にイラスト・アニメーション・音声を組み合わせてWebコンテンツ化しています。教科書であれば単に文字で説明されているだけの情報が、図やイラスト、アニメーションなどで視覚的にわかりやすく、また解説の音声も流れるので、教科書に比べてはるかにわかりやすいものになっているのが特徴です。
自分の授業の教科書や資料をわかりやすくしたいと思っている教員は多いようですが、忙しいなどでなかなかできない、それをやってくれたということでメリットを感じているということです。通信だけでなく、通常の講義も担当されている教員から「この教材を講義でも使わせてくれないか」との申し出もあったそうです。
運営上のメリット
(1) 教材発送の手間が省ける
これは説明の必要無しですね。受講の申し込みから単位修得まですべてWebで完結させることができます。
(2) 学習傾向をつかむことができる
eラーニングが従来の通信教育に比べて優位な点の1つに、学習履歴情報を取得できることがあります。教材を送付するだけの通信教育では、誰が、いつ、どのくらい学習したかという情報はわかりませんが、eラーニングでは講座閲覧回数、閲覧時間など、学習の足あとがすべてサーバに記録されます。
例えば、ある講座で、テスト成績別閲覧回数・閲覧時間を出し、成績上位者・下位者というカテゴリに分けたときに成績上位者の方が閲覧回数・閲覧時間が長かったとします。するとこの講座は、「一見わかりにくいが、じっくり閲覧すれば理解できる」講座であると仮説を立てることができます。その仮説に基づき、特に閲覧回数・時間に開きがある学習内容を見直し、内容がわかりやすくなるよう教材コンテンツを改編して仮説を検証するということができます。さらに、アンケートなどで講座の満足度を測り、閲覧回数と満足度の関係を見てみたりと、いろいろな角度からeラーニングを検証し、改善を試みるというようなことができます。
さらに、学習者の学習状況を見て、運営者側から能動的に働きかけることも可能です。しばらく学習できていない人に気遣いのメールを出したり、「期間終了まであと○日です」のようなお知らせを出したりと、学習を継続しやすいよう細かなフォローを行うことが可能です。LMSによっては、「○日間ログインしていない人にメールを出す」という設定をしておいて、自動でメールを出すことができるものもあります。
もちろんこのようなことを実施するには、それなりの手間がかかってしまいますが、うまく運用すれば、常に満足度が高い学習形態にも成り得ます。
今まではeラーニングのいい面ばかりを書いてきてしまいましたが、次回はデメリットを紹介していきます。
【筆者プロフィール】
西川修平 ◆ eラーニングサービス全般を提供する株式会社プロシーズ所属。当初は個人向けeラーニングサービスのみを提供していたプロシーズの会社設立に参画。以来、個人向けだけでなく、さまざまな業種の企業、学校・官公庁のeラーニング教材開発・システム導入に携わる。