事例から学ぶ
失敗しないeラーニング導入(2)
学生にとってのeラーニングのメリット
なぜeラーニング授業がこれほど支持されるのか、学生へのアンケートの回答をまとめると、大きく4つに分類されます。
(1)時間・距離の制約がない。
「いつでもできる」「通わなくても講義が聞ける」というのは、一番わかりやすいeラーニングのメリットですね。特にこちらの大学の場合、社会人として働きながら学ぶ学生が多いため、忙しい時間の合間をぬって学習・復習できるという点が特に支持されているようです。「いつでもできる」から「いつもやらない」というeラーニングのデメリットとしてよく言われる意見がこちらの学生からはほとんど上がってきていません。働きながらでも学びたいという学生のモチベーションが高いからなのでしょう。(受動的に学習しようとする学生にも「通う必要がなく、単位が取りやすい」と好意的に受け止められるかもしれませんが…)。
また、地方や海外在住の学生も多く、「面接授業は物理的に無理だからeラーニングは有効」という意見も多数見られます。eラーニングの講義をもっと増やしてほしいという要望もこのような方から多くいただいているようです。
(2) 費用を抑えることができる。
実際はこの大学でeラーニングの講義を受けるには、同じ内容の面接授業の2倍の費用がかかるのですが、面接授業には通うための交通費や、地方から出てくる方の場合、宿泊費というコストがかかってきます。総合すると、自宅にいながら受講できるeラーニングの方がリーズナブルに受講できるというのもeラーニングが支持される理由のひとつになっています。
(3) 教材がわかりやすい。
この大学のeラーニング教材は、すべて動画・音声を使った作りこんだものになっています。教員がシナリオを作り、音声を吹き込みます。教員が書いたシナリオに沿ってeラーニング開発会社が絵コンテを作り、それを元にFlashなどのWebアニメーション作成ツールを使って教材コンテンツに仕上げています。手間暇はかかっていますが、学生からは「通信教育の教科書に比べてはるかにわかりやすい」という意見が多数上がってきています。
では、手間がかかるからと言って、普段の講義を撮影してそのままWebで配信するとどうでしょうか。よほど講義の上手い教員の授業であれば学生の満足度は高くなるかもしれません(実際、予備校や専門学校の有名講師によるWeb授業は、評判の高いものも多いようです)が、多くの場合はそうはならないです。例えば60~90分の講義をパソコンで見るのはかなりつらいものがありますが、このように実際の講義とeラーニングでは、講義を受ける環境が全く異なるため、eラーニングにする場合は、それに適した形にする必要があります。具体的には別の回でご紹介します。
(4) 他の学生や教員の交流が可能。
通信教育ですと、普段の学習はもちろん一人でやるということになりますし、レポートを書いても学校との一対一のやりとりになるため、独学の域を出ることはありません。こちらの大学では、学生がテキストでディスカッションできるWeb掲示板が用意されていますので、他の学生の意見を知ることができたり、教員にコメントをもらうことができます。特に「自分では気づけなかったところを他の学生の質問で気づかされ、勉強になった」という意見が非常に多く、単純に意見を交わせるというだけでなく、教材による一方的な学びでは気づかないところを学ぶことができたことの満足感が大きいことがわかります。
以上4つが、主にeラーニングが学生から支持されている理由となっています。(1)と(2)は面接授業と比べて、(3)と(4)は、通信教育と比べて、それぞれのいいとこ取りをしたような結果になっており、これだけ見るとeラーニングが一番良い学習方法であるようにも見えますね。実際はデメリットもいろいろありますが、別の回に紹介します。次回は、教員や学校側のメリットを見ていきたいと思います。
【筆者プロフィール】
西川修平 ◆ eラーニングサービス全般を提供する株式会社プロシーズ所属。当初は個人向けeラーニングサービスのみを提供していたプロシーズの会社設立に参画。以来、個人向けだけでなく、さまざまな業種の企業、学校・官公庁のeラーニング教材開発・システム導入に携わる。